恋人⇆セフレ
第11章 空白
想像したくない1つの可能性に、泣きそうになる。
「ーーーーーーお兄さん…志乃さんとのことを、真木さんは、なんて言ってたの?」
情けなくも声が震えた。
ガタ。と腕にカップが当たり、揺れ溢れた珈琲が腕にかかる。
「何って…それより腕…」
「俺は大丈夫だから、頼むから、教えて」
心が引きちぎられそうだ。
冷たいものに覆われているような感覚。
お願いだから、俺の嫌な予感を否定してほしい。
ーーー躊躇いがちに里君の唇が開いたのを、瞬きも忘れて見つめる。
「『志乃とは、完全に別れた。今は好きな男と一緒にいる』って、聞いて…。駅でおにーさんを見つけた真木が、「彼のことだ」っておにーさんのこと教えてくれたんだよ」
全身が脱力した。
ずる、とずり落ちそうな体をなんとか止めて、天井を仰ぎ、息を吐く。
そうしないと、色々なものが溢れてきそうだった。