恋人⇆セフレ
第14章 エピローグ
「でも、2人の性格の相性がいいのか、書くのは随分楽しかったよ。
きっとお前らは出会うべくして出会ったんだろうな」
あとがきまで本をめくった真木が、清々しい顔でそう言う。
恋人とセフレを繰り返していた男から言われるとむず痒い気持ちになるが、俺もそう思いたい。
「志乃さん」と子犬なような無邪気さで俺の名前を呼ぶアイツを思い出して、ふっと笑みが溢れた。
「噂をすればだな」
「え?」
真木がそう言ったのと同時に、座っていたソファの右側が深く沈む。
それと同時に鼻を掠めた優しい香り。
「お待たせしました」
そして、愛しい笑顔と穏やかな声。
あぁ、好きだなあと、会って数秒で思う。
「業者さんがあと30分で着くそうです。そろそろ行きましょうか」
「あぁ、もうそんな時間か」
最後の一口だったカフェラテを飲み干して、店を出る準備をする。カバンをもつ左手の薬指には指輪が光っていて、見るたびに口元が緩みそうになる。
「真木さんも、色々手伝ってくださりありがとうございます」
「散々迷惑かけた詫びだ。気にしなくていい。引越し先の手伝いはいいのか?」
「はい。そんなに荷物はなくて、これから一緒に選びながら増やしていこうと思ってます」
ーーーーそう。今日は俺らが同棲する部屋に引っ越しする日だ。