恋人⇆セフレ
第14章 エピローグ
「これ、俺と伊織がモデルだろ」
ーーー市街地のあるカフェにて。
読んでいたパタリと本を閉じ、カフェラテの横にそっと置く。
ふかふかのソファに身を預け、目の前で優雅に珈琲を飲んでいる真木を見ると、「今更分かったのか」と小さく笑みをのせた声でそう言った。
随分初めの原稿と変わったなとは思いつつ、初めはただ真木の描く理想の未来を書いたのだと思っていた。
「女が伊織で、男が俺。まさか読みながらイライラさせられた男が俺とはな」
「傑作だろ?」
「うるせー」
クッと喉を鳴らした真木が、カップをテーブルに置いて長い足をゆったりと組む。
邪魔そうなくらい伸びつつあった髪はさっぱりと切られ、精巧な顔立ちがはっきりと見えるせいか、周りの女たちがほぅ。とため息を漏らしている。
真木は気付いているのか気付いていないのか、口元に柔らかく笑みをのせたまま本をパラパラとめくった。
「どんなに書いても、俺らじゃハッピーエンドにならなかったんだ。もしかしたらそういう運命なのかもと開き直ってな」
「…まあ、伊織ほど主人公向きな奴はいないからな」
「お前はウジウジするヒロイン向きだよな」
「はっ倒されたいのか?」
ぐっと拳を作り見せつけると、「冗談だ」と棒読みで返してくる。全く嘘くさい。