恋人⇆セフレ
第4章 上書き
『月曜日、新作の相談がしたい』
ブツッと電源を切り携帯を投げ捨てたい気持ちになるも、グッと抑えて返信を猛スピードで打ち込む。
『(昨日の今日でよくいけしゃあしゃあとメッセージ送れんなクソ野郎)わかりました。では○○カフェで打ち合わせしましょう』
※()の中は志乃の心の声です。
なんで俺がキレてるのかわかっていないから謝ってこないのは及第点だが、やはり何もなかったようにされるのはムカつく。なんだこの面倒な俺は。
「チッもう真木のことを考えるのはやめろ」
ふるふると頭を振り、脳内を漂う昨日の真木のポカン顔を一気に消し去る。何故なら今日はーー…
「志乃さん!」
俺を見つけた途端、尻尾を振る犬のごとく嬉しそうに手を振る男に、溜息を吐きそうになる。
ーーそう、今日はカフェ店員と出かける約束をした日だ。
てかどこから出てくんだあの元気は。
「お前のことだから早く来てると思って早めに来たつもりだったんだけど、いつからいたんだよ」
「俺もついさっきですよ。予定より早く会えて嬉しいです」
「…ふーん」
嘘はけ。と、頭についた大量の小さな葉を取ってやると、「あはは…」と、照れ臭そうに笑うこいつ。さっき来たばっかでこんなに付くわけねえだろ。
ほんと真面目っつーか、真っ直ぐっつーか。
「で?今日はどこ連れてってくれんの?」
「それなんですけど、いくつかピックアップしておいたんです。まだ志乃さんの好きなとことか分からなくて…選んでもらえますか?」
「くっ考え抜いて決めた場所って言ってたくせに決まってねーじゃん」
「ピックアップを頑張ったんですよ」
楽しそうに笑うこいつに毒気を抜かれた気分になって、出されたパンフレットを覗く。