恋人⇆セフレ
第1章 プロローグ
もう何度目か分からないセックスを開始する俺らだけど、付き合っているわけではない。
正確には付き合っていた、といえばいいかな。
真木とは高校で知り合って、恋人、セフレ、恋人、セフレを何度も繰り返して約10年の付き合いになる。
25歳の今もセフレとして体を繋げているけど、別れたのはつい3ヶ月前だ。
なんで別れたのかは正直覚えていない。だって毎回どんな理由で別れたって、いずれはまた付き合うことになるんだし。
今回も、そろそろ「よりを戻さないか」って真木が折れるんだ。多分、このセックスが終わった頃ぐらいにでも。
「あっあぁっイクっイク〜〜ッ!」
「くっ…ぅ…っ」
もう透明になった精液を出し切って、再び体をベッドに沈める。
「はあ…はぁ…は〜…、」
顔も上げれず、吹き出す汗もそのままに、隣に倒れこんだ愛しい男を見て締め付けられる心。
真木。ほら、今だぞ。
いつもみたいに俺の前髪を撫でて、その無愛想な顔を微笑みに変えて、「志乃、俺たちやり直そう」って言うんだろ。
「志乃…」
ほら、な?
前髪をそっと優しく撫でられる。切れ長の瞳がスゥ、と細められて、真木の軽薄そうな唇がゆっくりと開いた。