恋人⇆セフレ
第6章 悪夢
これはーー…悪夢だ。
「真木…?」
思わず名前を呼んでしまうと、伊織がはっと息を飲んだ。
その反応にまずいと思い、慌てて首を横に振ると、全てを察したのか小さく頷いてくれる。
でも一体どういうことだ。なぜアイツが俺の家に来るんだ。これは幻聴なのか?
「寝てるのか?」
混乱する俺の追い討ちをかけるように、そんな声がかけられる。
居ないと思え!!と心の中で開き直りたかったが、外の室外機が回っている為居留守なのが完全にバレてしまう。
だが、あのクソヤローに居留守使ってもいいんじゃないか?とも思い直し、どうしようか迷っていると、伊織が俺の頬を優しく包んだ。
「何かあれば俺を呼んでくれたらいいので、出てください」
「でも…」
そう言いつつ、さっきまでの柔らかな笑みに僅かに力が入っているのが分かり、ためらう気持ちが出てしまう。
だけど、ここで出なければ、あいつを完全に断ち切ろうとしていることを伊織に証明できないと思い、コクリと頷いた。
大丈夫だ。今は傍に伊織がいる。
『はい。澤木先生ですか?』
俺は下着だけ履いて、インターホンの受話器を取った。
『!あぁ。悪い、編集長からメールで俺が行くこと伝えてたみたいなんだが、もしかして寝てたか?』
と、諦めて帰ろうとしていたのか、一瞬真木の声色に動揺が入ったけれど、すぐにいつも通りの落ち着いた口調で言葉が返ってきた。
ーーーだが一方の俺の顔色は、サーッと一瞬で青く染まった。
まじかよ。もしかして俺が報告メールを送った後か??確認すればよかった…!!