恋人⇆セフレ
第6章 悪夢
「志乃さん…」
伊織が伺うように俺の隣に立つ。
柔らかい伊織の匂いに気持ちが僅かに落ち着いて、肩を伊織に預けた。
「伊織…悪い…」
「どうして謝るんですか?ここ暑いですし、リビングに戻りましょう」
「ん…」
つい数時間前まで、お互い微笑みあって付き合おうと言ったばかりなのに、こんなことになってしまったことに罪悪感の靄が胸に巣食う。
ーーーーアイツがどういうつもりでさっきの態度をとったのか。それを追求しても、アイツが俺を振ったということも、彼女がいるということも事実だ。
"もしかしたら間違いかもしれない"なんて期待をすることにも疲れたし、きっと真木は熱が出て気が立っていただけだろう。
そう自分に言い聞かせ、その夜は何もすることなく、ただ伊織と俺は抱きしめあって眠った。