テキストサイズ

恋人⇆セフレ

第6章 悪夢




カチャ、とスプーンを置いた真木は、立ち上がって急ぐように玄関へと向かった。



でもその足取りはまだ頼りなく、ハラハラした俺は真木を追いかけて腕を掴んだ。




「待ってください、まだ本調子じゃないのに1人だけで帰せません!」



「っ……れ」


「え…?」



顔を正面に向けたままの真木から何か聞こえたが、声が小さくて聞き取れず、思わず聞き返す。



…つーかまだ腕熱いし、熱が下がったわけじゃないのに何考えてるんだ。



ムキになってしまったのもあるが、絶対に1人で帰らせるものかと手の力を強めた。



その瞬間



「やめてくれ…っ」



真木は唸るように怒鳴ると、俺が掴んだ手を強く振り払った。


バチっと乾いた音が響いて、振り払われた手がヒリヒリと痛む。



けれど俺は、真木から強く拒絶されたことに呆然とするしかなかった。



数秒後、はっとした真木が勢いよく振り返って辛そうに眉根を寄せたけれど、またフイッと正面を向いてしまう。



「…そのわざとらしい敬語は、やめてくれ」


「…、」


「ーーー…手、悪かった…それから、邪魔をした」



邪魔をした。それは家に、ということではないのはすぐにわかった。



それにぐっと押し黙った俺を横目で見た真木は、また「すまない」と小さく謝って、出て行ってしまった。




扉が閉まった後、シンと静まり返った廊下で、一ミリも動けずに玄関をぼーっと見やる。






なんだよ、なんなんだよその態度。



まるで、嫉妬している男みたいなーーー…
伊織と俺から逃げるような、そんな態度。


付き合ってる時はそんな態度、一回も向けたことなかったくせに…ーーー



ストーリーメニュー

TOPTOPへ