恋人⇆セフレ
第7章 木漏れ日
【昨日はありがとう。それから、ろくなお礼もせずに帰ってしまって悪かった。お礼とお詫びに、取材先で何かご馳走させてくれ】
休憩時間中、先日真木から送られてきたメールをそれとなしに見直す。
最後のあれには決して触れてくれるなというような文面に、俺も当たり障りのない返事をしたのだけど…。
「…くそ、こんなんで当日大丈夫なのかよ…」
全くスッキリしない気持ちに深いため息を吐きそうになって、切り替えようと仕事に戻ろうとしたその時ーー…
「えー!それで?彼、喜んでくれたの?」
聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、俺はあげかけていた腰をそっと下ろした。
チラッと声のした方を見ると、若い女3人がそういう話で花を咲かせているようで、ほう。と耳を傾ける。
別に、聞いてどうするとかないけど、ちょっとは参考にさせて頂きたい。スケジュール帳を確認するふりをして、耳だけは女たちの会話に集中させる。
「朝サプライズで弁当渡しに行ったら予想以上に喜んでくれて、その後感想のメールとか美味しかったよって食べ終わった後の写真とか送ってくれたの」
「いいな〜そうか、弁当の手があったか!」
「そうそう。やっぱり手作りに飢えてるらしくて、効果絶大だったよ!」
…なんなんだこの会話は。元から料理のできる奴の話じゃないか…!
自分が先ほど食べた昼ご飯に視線を落とすと、コンビニの弁当がドンッと目に入る。ダメだ、全く参考にならん。
俺が手料理なんて、不器用な俺がキッチンに立ったら世紀末の終わりだ。