恋人⇆セフレ
第7章 木漏れ日
隙間がないくらい抱き合って唇を啄みあう。
そして長いキスの後、最後に伊織の薄い唇がはむ、と俺の唇を食んで離れると、大きな手が頬に添えられて、コツンとおでこをぶつけ合わせた。
少し離れただけで唇が痺れる。もう伊織の熱が恋しいなんて。
「夢じゃない?」
眉根を切なげに寄せ、伊織の透き通るような茶色い瞳が揺れる。
「これが夢なら俺は目を覚まさないぞ」
「ん、俺もです。ずっと、ずっと好きだったんです」
「いお…」
名前を呼ぶ声は、伊織によって飲み込まれた。
けれどそれはすぐに離れ、ぎゅっと抱きしめられる。
重なり合う胸から響く心臓は馬鹿みたいに早くて。きっと俺も同じなんだろうなと思うけど、もうそれが恥ずかしいとは思わない。
「ねえ志乃さん」
「…ん」
「今日の俺、カッコ良かったですか?」
「まあまあな」
「ええ、なんですか、それ!」
ガバッと肩を掴んで引き剥がされ、「うるせえ」と軽く叩くと、伊織は拗ねた声で文句を言いつつも破顔させた。
ゆるっゆるじゃねえか。
「…お前は俺の前だけカッコ良ければいいんだよ」
でもきっと、俺も顔の緩みは負けてないんだろうな。
「俺たち、ただの馬鹿ップルですね」
「ふはっ」
ーーじわりと胸に広がる温かいものを噛み締めながら、木漏れ日の中で俺たちは暫く抱きしめあっていた。