恋人⇆セフレ
第7章 木漏れ日
ひゅっと息を飲んで、羞恥からくる涙がぶわりと湧き上がってくる。
「ねえ志乃さん。もういい加減好きって言ってください」
俺が心の中でさえ言わなかった言葉をサラリと言いのけた男は、もうこれ以上ないくらい俺を掻き抱く。
胸に回された腕が少し震えているようにも感じて、その愛おしさに俺はとうとう涙を零した。
伊織のくせに、伊織なのに、
ーーーー違う。俺は、伊織だから、
「ーー好き、だ」
ボロボロ涙をこぼしながら躊躇いがちに口にすると、ストンと何かが胸の奥に落ちた。
ほらやっぱりね。知ってたけどね。と、もう1人の俺はそう笑ってすうと消える。
そうすると、今までのストッパーが壊れたように口から次々と言葉が零れ落ちだした。
「っ他の奴がお前の事見てるだけでムカつく」
「はい」
「あの猿男と仲が良さそうなのもムカつく」
「さ…?ふはっ、はい、」
「ーーー…俺、嫉妬深いんだ。俺が一番じゃないと、ムカつく」
「それは、心配せずともずっと志乃さんが一番ですよ。…ねえ、こっち見て?」
少し緩まった腕。つまりはこっちに体を向けろと言うんだろう。
いつもの俺なら、この真っ赤であろう顔を見られたくなくて頑として向かなかっただろうが。
俺も伊織の顔が見たくて、ゆっくりとだが素直に体を向けた。
「ンッ」
そして、伊織の嬉しそうな顔が視界いっぱいに見えた瞬間、どちらからともなく唇を押し付けあった。