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月の木漏れ灯図書館

第10章 とある国の死神と魔女

とある国に死神と魔女が住んでいました。緑のきれいな静かでいい国です。
誰も、こんなところに死神と魔女が住んでいるなんて知りません。

死神の少年は夜になれば竪琴をひきます。その国の中心にそびえ立つ高い塔で。
詩を紡ぎます。

これは遠い遠い過去のはなし。
シラユリの咲く美しい夜の国に暮らしていたひとりの死神の物語。

死神はいつもひとりだった。
でもある日、夜の国に人間の少女が迷いこむ。

「ごめんなさい。あまりにもきれいなユリが咲いてたから……」

少女はたくさんの死神に囲まれる。
シラユリのように、美しい少女だった。
この少女をどうするかーー死神たちはざわざわと相談し始めた。

いつもひとりだった死神はこういった。

「僕の持つ、この竪琴と引き換えにその少女を離してもらえませんか。後は僕に任せてほしい」


死神たちはとまどった。
しかし、死神たちはその死神にしたがった。


なぜならば、その竪琴は死神の主からの贈り物ーー欲しいものを願えば叶え、この世のどんな楽器よりも、美しい音色を奏でるのだから。


いつもひとりだった死神はその竪琴を手放し、シラユリのように美しい人間の少女を手に入れたのだった。


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