テキストサイズ

月の木漏れ灯図書館

第25章 帰りたくない

「夏祭りの音色に誘われてきたのか?確かに惹かれるし、帰りたくなくなるよな」

そう言って鳥居の柱にもたれかかる少年は虚空を見つめていた。



自分も同じ、なのだろうか?

少女は思わず息を呑む。

繰り返されるお囃子の音色が胸にしみる。懐かしくて、帰りたくなくて、苦しくてーー

少年の美しい蒼碧色の瞳が向けられる。

「ここはお前が、真に帰りたいと願わなければ帰れないよ。そういう 場所なんだ」


否、少年の顔色は変わらない。言葉にも感情はみえない。

少女は揺れ惑う。

少年だけはどこか異質な感じがした。なんとなく、だけど。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ