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月の木漏れ灯図書館

第3章 桜守の猫

またいる。

夜のバイト帰り、休憩がてら立ち寄る小さな公園の一角に黒猫がちょこんと桜の前に座っている。始めの頃はどうせ気まぐれだろう、どうせすぐ立ち去るんだろうなと思っていた。

それがどうだ。朝公園の前を通るがやっぱり黒猫はいて、夜立ち寄る公園にも毎晩いる。そして今日もーーベンチに腰かけて、同じように桜を見る。

黒猫の真意はわからないが、ここは花見をしに来ているが一番有力候補だろう。

「……なあ。お前はさくらが好きなのか?」

返事など期待してないが一応聞いてみる。すると意外にも返事は返ってきて、にゃあと鳴いた。


「さくらなら、すぐそこの大きな公園にもあるだろ。なんでここ?」

すると抗議の声が上がった。

一体何が気に入らなかったのだろう。困り顔の俺とちょっと不機嫌そうな黒猫。この桜の木に何かあるのか、大事な何かが。

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