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月の木漏れ灯図書館

第28章 金木犀の香りがあなたを探す

金木犀の香りがあなたを探す。

今も探している。


あれは金木犀が美しい秋の夜だった。

「僕は永遠にこの夜のことを忘れない。もう一度巡り会うことができたのなら……」

私は誰かと金木犀の咲く庭で会っていて、何かを話していた。

でも。

それがどんな内容で、相手がどんな人物で、どんな表情をしていたのかーー不思議なことに何も覚えてない。

いや、ちがう。

金木犀と、金木犀の香りだけは強く残っている。

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