子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第5章 俺の天使
そのまま無理やりにでも、連れて帰れば良かったのか?
……だが、愛莉の意思は?
……これが強引じゃなく、合意の上だったら?
俺が差し述べた手を取らずに、ぼんやりした目を向ける愛莉、
その黒くて大きな瞳が、落ちそうなくらい揺れて、涙が膨らみ次々と零れ落ちた。
「あたし……誠也さんとは行けません……っ、涼くんのこと…、放って置けない……っ」
「なんだよ、それ……」
息を飲むようにして、驚いたように、目を見開く麻生、
それを見つめる愛莉。
見つめ合う二人。
「……幼馴染みね、なるようになったと、言うべきか……」
ほうっと息をつく俺。
……分かっていたことだ、初めから、俺が勝手に、大人気なく気持ちを押し付けて、
体で繋ぎ止めるような事までした。
……お互い様じゃないか、麻生のしたことと、何も変わらない。
ただ俺の方が早かっただけで………。
ヤバい。
泣きそう……だ。
「……それじゃあ、今日はもう無理するなよ?」
なんかやらしい響きだ。
「会社で、また……」
何を言えばいいのか分からず、愛莉の家を出て行こうとして、
最後に愛莉を振り返る。
何か言おうと口を開きかけて、また、きゅうっと閉ざす。
俺の好きな、愛莉の仕草を見て、出口へ向かった。