子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第5章 俺の天使
ゴージャスな東京夜景。
国産牛フィレ肉&フォアグラのロッシーニ……。
イタリアのデザイナーが手掛けた空間、大きな窓から広がる夜景。
テーブルの上のキャンドルが揺れて、幻想的な雰囲気にうっとりとする。
お料理の盛り付けも綺麗、お洒落なお皿に、味も最高。
どうやら予約してたらしい涼くん、ワインを注文して、
「涼くん…車で来たよね?」
声を潜めて注意すると、こともなげに、
「今日はここに泊まるからいいんだよ?」
ニヤリと笑った。
「……っ」
ますます緊張して固くなるあたし。
はっきり言って、こうゆう場所に来たことないし、イタリアンは分かるけど、
こんな本格的な雰囲気は初めてだ。
涼くんにワインを薦められて、あんまり飲めないから、断ろうとして。
誠也さんにワインにジンジャエールを混ぜて、飲ませてくれたことを、
思い出した。
取り敢えず乾杯して、ほんの少し飲んだだけだったのに、
ぼんやりしてしまう。
お料理を食べ終えて、後はデザートになるのを待つ間に、
トイレに行く為に席を立った。
窓の外の夜景をぼんやり見つめながら、トイレに続くドアに向かい、
同じように食事をする、テーブルに座るカップルに目が止まり、
一瞬、足が止まってしまう。
――――誠也さんだった。
一緒にいるのは、綺麗な上品な雰囲気の、大人の女の人だった。
驚いたように目を見開く誠也さんと、
視線が重なる。
ふらりとした足取りのまま、急いでドアに向かい、平常心を装おって歩く。
……どうして誠也さんが?
明日は休日だから、誠也さんだって、そんな人がいてもおかしくはない。
「……愛莉、大丈夫かい?」
ドアから出てトイレに向かい、
グイッ
あたしの手が、誠也さんに掴まれる。
「大丈夫ですから……」
誠也さんを振り返り、そう言って、トイレに行こうとするのに、
掴まれた手が、離して貰えない。
もう一度振り返り、誠也さんを見上げる。
何も言わない誠也さん。
……あの女性は誰?
聞きたいけど聞けない。
そんなこと聞いて、どうするの?
「あの…真木部長、離して…下さい、大丈夫ですから……」
相変わらずの美形、艶やかな色気を纏い、そこにいるだけで、圧倒的な存在感を放つ。