子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第6章 大人の関係
シンプルで何もない部屋、ベッドだけがやけに大きかったのを覚えている。
お姉さんの名前は『詩乃さん』と言った。
ニコニコ笑顔で、ケーキやジュースを頂いた。
はじめは和やかに話をして、それなりに楽しかったのに。
詩乃さんがあたしを見る目が、普通じゃない事に気付いた。
『可愛い、お人形さんみたい、愛莉ちゃんお人形さんごっこしようか』
誘われてベッドルームのクローゼットの中に、たくさんの洋服があり、
着せ替え人形のように着替えて、大はしゃぎの詩乃さん。
後で聞いた話だったけど、詩乃さんは事故で子供を亡くして、旦那さんとも離婚して、
職場にいられなくなり、転勤して来たようだった。
色んな可愛い服が着られて楽しかったけど、やはり子供的に飽きてしまい、
『もう帰ろうかなぁ、涼くん?』
涼くんに助けを求めた。
『そうだな、詩乃さん、俺達そろそろ帰るよ?』
涼くんに手を引かれて部屋を出ようとして、残った方の手を、
ぎゅっと詩乃さんに掴まれた。
『もう帰っちゃうの?じゃ、じゃあ、最後にもう一着だけ?これを着てくれたらもう、帰っていいから、ね?』
グイグイと強い力で手を引かれて、痛い、小さく悲鳴をあげた。
その手を、涼くんが振り払った。
『触るな、……汚い手で、愛莉に触るな』
あたしを庇うようにして、涼くんの体で視界が塞がる。
『まぁ…、汚い…ですって?よくもまあ、あたしにそんな口が聞けたわね?』
『……』
黙ったままの涼くん、視界が塞がったまま、ぎゅっと抱きしめられた。
『そうだわ、この子の目の前でシてみましょうか?この子がどんな顔をするのか……面白そうじゃない?』
『……あんなこと、もうしないって約束しましたよね?それでもまた来て欲しいって、詩乃さんが言うから……』
『そんなの、嘘に決まってるじゃない?あんなことされて、律儀に約束した日にのこのこ来るなんて、やっぱりまだ子供ね?大人を信用しちゃいけないわよ?』
『……愛莉、さっきの部屋でお菓子食べてろ?テレビをつけて、音、大きくしろよ?』
あたしから離れて、ため息をついて、涼くんが言う。
リビングに連れて行かれて、テレビをつけて、ボリュームを上げる。