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子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます

第7章 愛され過ぎて




藤原凛花side


森下ちゃんが張り切って、打ち合わせに行く姿を見て、真木部長が寂しそうにため息をついていた。

その姿を見ると、少しだけ胸が痛む。

人の気持ちは複雑だ。

あたしだって、どうしてこんなに面倒な性格なんだろう。

昨日はお母さんに呼ばれて、お見合いにホテルの食事に行った。

お見合い相手はお母さんの友達の息子さん、どうやら大学が一緒だったらしく、

向こうはあたしを知っていた。

あたしは知らなかったけど、少し気持ち悪いと思ってしまった。

外見は普通、仕事は大手の会社の営業、性格は穏やかで優しい。

二人きりになり、話もしたけど、正直に言えば、退屈だった。

……結婚するなら、普通の見た目で、真面目な人で、次男だし、

いい条件なのに。

誰でもいい訳じゃなかったのかな。



―――――もう、一生一人で独身でもいいかもしれない。

あたしなんか、一人でも生きていけるんだし……。



「……荷物届いてます、ここに印鑑をお願いします」

総務課に荷物が届いて、受け取り印鑑を押すのも仕事だけど、

他にも入ってすぐの場所でも社員はいるのに、どうしてわざわざあたしのとこに?

……ていうか、聞き覚えのある声。

視線を上げて、目の前の人を見て、業者の制服じゃなく、スーツ姿だと気付いた。

ストレートのやぼったい、長い髪は黒くて、顔が隠れているけど、

その姿はどう見ても……


「……の、野上……っ?」


いつもは茶髪でウェーブのかかった髪を、お洒落にかきあげてるのに、

その姿は冴えない男そのもので……。

パーマをストレートにして、髪を染めて、顔が見えない姿だけど、

どうしてこんな……?



「……印鑑をお願いします」

緊張した様子で野上がデスクに広げた紙に、慌てて印鑑を押そうとして、

固まってしまった。


……婚姻届!?

しかも野上の名前がしっかり書かれていて、保証人まで記入されて、

誰か知らない保証人の名前だけど、

どういうこと……!?


「……あんた、ちょっと、頭おかしくなったんじゃ……っ」

パニックになり、野上を指差して震えてしまう。

野上は無言で届いた荷物の段ボールを開けて、中身を取り出した。

……大きな、バラの花束、真っ赤なバラ。

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