子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第7章 愛され過ぎて
会社を出た駐車場で、涼くんにばったり出会った。
一緒にいるのは、同じ営業部の江藤さん、きつめの美人で、
仕事もバリバリのキャリアウーマン、涼くんとの噂があった人だ。
お似合いな二人に、胸がもやもやする。
「よお、愛莉は今から打ち合わせだって?しっかりな?」
ポン、頭をいつものように撫でられて、ついでに励ますように、
背中を叩かれた。
「うん、涼くんは外回りの帰り?」
「お疲れ様です、麻生部長」
鈴木くんが涼くんに頭を下げる。
江藤さんも軽く頭を下げた。
「そ、こいつが一人で対処出来なくってなぁ、俺もゆっくりデスクワークしたいのにな?」
涼くんは仕事の時は固くて厳しいのに、江藤さんの前ではくだけて見えた。
「だって、やっぱりあたしじゃどうしても、軽く見られちゃうから……悪かったわよ、奢りますから営業部長」
「そんなのいらねぇよ、外回りの方がしょうにあってるし、変わりにお前が書類仕事してくれよ?」
「え~、あたしが苦手な作業って分かって言ってます?ほんと、鬼部長ですね?」
ポンポン言い合う二人を見て、あたしと鈴木くんは、目を合わせて、先に失礼した。
軽く頭を下げて、なおも言い合う二人を見て、胸のもやもやはおさまらない。
鈴木くんと二人で社用車に乗り込む。
こういう場合、あたしが運転するべきかなと思い、
運転席に回り込むと、わぁ、
なにやら慌てて鈴木くんが、運転席のドアを開けた。
「森下さんは、助手席でっ、俺が運転しますから」
「あっ、すいません」
すごすごと助手席に乗り、シートベルトを締めた。
「すいません、気を悪くしないで下さいね?物品の買い出しに、森下さんが車で行ってたのは知ってるんですけど」
「はい、一応免許もありますし、安全運転ですよ?」
「それは、分かってるんですけど、その…シートやミラーの位置が色々と…」
口ごもって笑う鈴木くん。
そういえば、
社用車に乗ると、シートを前によせて、ミラーの位置も変えないと、
運転しずらいから、いつもそうやっていた。
考えてみれば、後で使う人はきっと、不便な思いをしてたのかもしれないな。