子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第7章 愛され過ぎて
今まで全く気付かなかったけど、桐生は身長は高くて、惚れ惚れする程、スタイルがいい。
急にドキドキして、思わず目を反らすあたしの前で、
桐生がポケットから、いつものメガネを掛けた。
……あ、全然違う。
「何よあなた、どうしてメガネ外してたのよ?」
「煙草を吸う時は、ヤニが付くと嫌なので、外してるようにしてます」
「へ、へぇ」
やっぱりこいつ、神経質なんだ、お見合いは絶対に断ろう。
「さっき言ってましたね?この人ならいいかもと…」
「やだ、あれはっ、違うわよっ、…他の人を見て、言ってたんだからっ」
「いえ、あれは僕のを見て、言ってました」
…こいつっ、
視力が悪い癖に、ちゃんとばっちり見えてるんじゃないっ、
「…僕も、江藤さんなら、結婚してもいいと、ずっと考えていました」
「…って、お見合いの話よね?言っておくけどあたしは、断るつもりなんだからね?」
「……それは何故です?」
桐生のメガネの奥の瞳が、きらりと光り、メガネを押さえて、ずいっと顔が近付く。
…うっ、至近距離で見たら、メガネ掛けていても、綺麗な顔だわ。
…じゃなくてっ、
「だって結婚なんかしたくないし」
「もう適齢期ですよね?女性としてもっと危機を感じた方がいいのでは?」
「仕事だって、辞めたくないし」
「僕は共働きでも構いません」
「…あっ、あんたみたいなタイプ、好きじゃないんだから…っ」
思わず指を突き付けて、後退りをしてしまう。
「それは…おかしいですね?僕は見た目もいいですし、家事も料理も完璧にこなせますし、実家は不動産で、僕所有の土地もあります、あ、もちろん住んでるマンションは購入済みです、そんな僕をどうして……」
マンション、土地持ち、料理出来る男。
まさに理想の条件は揃ってる、
揃ってる、けどねぇ…
「仕事の時のあんたの見た目、気持ち悪いのよ、メガネとかそもそもあたし、無理だからね?キスとかどうやってするのか、分からないじゃない」
「…ほう、キスですか?」
ずいっとまた、桐生が距離を縮めて来て、悲鳴を上げて、慌てて離れて、
ベンチの上にある、弁当を纏めて片付けて、逃げるように走って、
「とにかく、お見合いなんかしないんだからねっ」
捨てゼリフを言って逃げ出したんだ。