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子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます

第8章 本当に好きな人



川合伊予side


資料を作り終わり、コピーをしていた。



「今日は残念だったな?」



背後から話しかけられて、びくりとして、資料を落としてしまった。

振り返れば、麻生部長がふっと笑っていた。


「あ…、いえ、私のせいです。また、行くつもりですんで……」



何故だろう。

今は麻生部長の顔を、まともに見れない。


慌てて資料を拾って、麻生部長が一緒に拾ってくれて、

手が触れてしまい、

ぴくりとして手を引っ込めて、持っていた書類まで一緒に落としてしまった。

バサバサバサッ、


「おいおい、大丈夫か?今日のお前おかしいぞ?何かあったのか?」


落とした書類までも、拾ってくれる麻生部長。

余裕の微笑みに、苛ついてしまう。


……何かあったって?

あなたがそんなこと、聞くんですか?


目の前にはいつも通り、綺麗な顔立ちの麻生部長がいて、

艶やかに笑っている。

派手な顔立ち、彫りが深くて、日本人離れした美形。

……こんな人が、私なんかを相手にしてくれたのが、奇跡なのに。



「……おい、これはなんだ?」



大きめな茶封筒を持つ麻生部長、その中身が一緒になって、

書類と紛れ込んでいたんだろう。


「……っ、それは……っ」


会社の書類と間違って、持って来てしまったんだ。


……私の婚姻届。

ご丁寧に『申し訳ありません』のメモまで一緒に、

見られてしまった。

……麻生部長に。


焦って取り返そうと手を伸ばして、麻生部長がひょいと避けて、

じっくり婚姻届を見ていた。


「……返して下さいっ」

「そうか、今日1日お前がおかしかったのは、これのせいだったのか?てっきり俺のせいかと思っていたのにな?」

「どうして部長のせいで、おかしくなんかっ」


麻生部長はおもむろに自分のデスクに座り、婚姻届に記入している。



……自分の名前、『麻生 涼』と。



「……そうか、それは残念だ、じゃあ、これからの人生の中で、じっくりおかしくなって貰おうか?」

デスクの引き出しを開けて、自分の印鑑を出して、判子をついている。

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