子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第8章 本当に好きな人
川合伊予side
「……は?あの、何を言ってるのか、全く分からないんですけど……?」
「そういえば、結婚式はハワイで身内だけの挙式だと言っていたな?有給休暇一緒に取ろうな?」
「……っ、麻生部長?……失恋しておかしくなってるんじゃないんですか?」
「なに言ってんだ」
ガタッ、
デスクから立ち上がって、麻生部長があたしの目の前にすっと立つ。
身長が高めの私。
パンプスを履いてるから、目線はほぼ変わらない。
「俺は大真面目に言ってんだ、……確かに失恋して間もないのに、自分でもどうしたんだと思ったよ?……だけど、結婚したいのはお前なんだと、すぐに分かったんだ、それにお前にとっても好都合だろう?」
痛いところを突かれてしまう。
確かに結婚式の予約もしてるし、会社でも結婚すると、
舞い上がって言いふらしていたし、
自演だと言われているのも知っている。
両親だって、結婚式にハワイに行けると喜んでいる。
旅行会社だって、キャンセルとなると、キャンセル料金も痛いし。
黙って考え込む私を見て、ニヤリと笑う麻生部長。
「そうと決まれば、すぐに市役所に行くぞ?」
散らかった資料をてきぱきと片付けて、あたしの手を繋がれる。
ふらりとした足取りで、一緒に会社を出て、タクシーに乗って、
市役所に行ったんだった。
市役所に婚姻届を提出して、何故だか写メを撮る麻生部長。
「よろしくな、奥さん、今日からお前、麻生伊予な?」
「麻生…伊予…」
まだ呆然としたまま、麻生部長と一緒に、手を繋いで歩く。
「…でだ、結婚する上での約束、一つは俺のことを名前で呼ぶこと、俺も伊予って呼ぶしな?」
「はあ……」
「…で、会社でもちゃんと報告する、ま、当たり前のことだなこれは」
「……えっ?やっ、でもそれは……っ」
急に現実に目覚めて、冷や汗を掻いてしまう。
「言っておくけど、その方がお前の立場が良くなっていくと思うぞ?」
「う…っ」
そりゃあ、架空だと思われていた婚約者が、麻生部長なら、
……騒がれるだろうけど。
「それからこれが一番大事なんだけどな?俺と可能な限りは毎日セックスすること、俺、絶倫だからさ、ちゃんとシないと死ぬわけ」