子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第3章 頭の中から離れない
野上くんが納得したように、あたし達を見比べた。
「会うのは久し振りですけどね?」
藤原さんに手をどけられたのに、自分のランチのおかずにあった人参をひょいと口に放り込まれた。
今日のランチは酢豚で、人参はあんまり好きじゃないって、
知っててわざとあたしに食べさせてる。
もう大人になったから、昔みたいに全く食べれない訳じゃないのに。
涙目になりそうになって、しょうがなくて、口の中でもぐもぐする。
満足そうな意地悪な笑顔。
「そうだったか?」
「まともに会話したのは飲み会の時でしょう?」
会社では何度か見掛けたけど、まともに会話することがなかったし、
挨拶する程度だったから。
「なんだ食べれるようになったのか、偉いな?」
少し残念そうな顔をして、また綺麗な笑顔で、自分のランチの人参を選んで、
あたしの口に押し付けようとして後退りした。
……その時だ。
涼くんの手を掴んで、自分の口に持っていき、ぱくりと食べた人が現れた。
「……麻生、こういうのはパワハラになるだろう?」
「……なんだ、真木か?」
「真木部長……?」
「部長~」
「せ…いやさ…部長?」
みんなが注目する中、誠也さんがいつも通りの甘い笑顔をあたしに向ける。
相変わらずの美形、艶やか色気が眩しい。
「今日は忙しくて、おむすびを買いに来ただけなんだ、君達は気にせずにゆっくり食べてくれ」
あたしの頭を撫でる誠也さん。
みんなの視線が集中してしまうのに、全くのマイペースであたしの頭を撫でている。
「パワハラって、真木こそ、それってセクハラじゃねぇの?」
あたしの頭を撫でる誠也さんに、呆れたように涼くんが指摘する。
それに対して、艶やかににっこり笑う誠也さん。
「ああ、これ?俺はいいんだよ?愛莉も嫌がってないしな?」
あたしに向けて流し目を送る。
一斉にどよめく食堂、みんなの視線が集まり、真っ赤になるあたし。
「とはいえ時間もないし、また、帰りに一緒に帰ろう?」
ふっと屈んで、あたしの耳元に小声で囁かれた。
こくこくと頷いて、嬉しそうな笑顔が離れていく。
本当に時間がなかったみたい……。