子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第3章 頭の中から離れない
午後の業務も忙しくて、健康診断の結果を各部署に振り分けて、配ったりしたり、
年末調整、確定申告の時期にも突入する、
それに株主総会の準備、資料作り、社内広報を、作成したりとてんやわんやの業務が続く。
真木部長とのデートを期待していたけど、どう考えても定時には帰れない様子。
帰ろうと思えば帰れるけど、
誠也さんを待ってあげたいし、少しでも負担を減らすべく業務に専念して、
気が付いたら社内で二人だけになり、パソコンから顔を上げると、
外は真っ暗になっていた。
慌てて帰り支度をする。
「もう暗いし、一緒に帰ろう?」
誠也さんも帰り支度を整えて、一緒に会社を出た。
「はいっ…」
並んであるいて、10月の冷たい夜の空気に震えていると、
誠也さんが黙って上着をあたしに着せてくれた。
ふわりとした、誠也さんの暖かい体温に包まれて、幸せな気分になる。
「一緒に食事でもと思ったが、ろくな店が開いてないな、悪い……」
申し訳なさそうに気遣う眼差し、タイミング良く、お腹の虫が鳴り、
「……ひゃあっ」
声を上げて、自分のお腹を触って誤魔化した。
くっ、
珍しく声を上げて笑う誠也さんの表情を、思わず見とれてしまう。
結局、遅くまで開いているスーパーに入り、簡単に作れる材料を一緒に買った。
当たり前のように誠也さんのマンションに行き、歯ブラシや、マグカップを選んでくれた。
下着や化粧品まで揃えてくれて、今日は泊まる気満々なんだと、
簡単な着替えまで買い揃えたのを見て驚いた。
「……どうせなら、明日着て出社する服は、マンションのコンシェルジュに用意させよう、ああ、それならいっそセンスのいい下着と……」
ぶつぶつウキウキ呟く誠也さん、あたしが化粧品を選ぶ間に、
どこかに電話していた。
「……コンシェルジュって何でしょう?」
素朴な疑問にふっと笑う誠也さん。
「見栄を張って高級マンションに住んでるけど、あそこに勤務するコンシェルジュがいてね?ほとんど何かを頼むことなんてなかったんだけど、ちょうどいいから甘えてみようかと思ってね?」
さらにきょとんとするあたし、だから、コンシェルジュって何ですか?
そんな視線におかしそうにふっと笑う。
「まあ、早く言えば、マンションの何でも屋かな?電球切れたとか、シーツ替えてとかね?」