子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第1章 片思い
みんな逃げるように退社して、トイレから出て、自分のデスクの荷物を取りに向かう。
真木部長が廊下を歩く後ろ姿が見えた。
相変わらずスタイルが良くて、足が長いなぁと惚れぼれして見つめてしまう。
その時コピー機に置きっぱなしにしてある、書類に目が入ってしまった。
嫌な予感がして中身を見ると、休み明けの朝イチにある会議で、
使うモノだということに、気付いてしまう。
……コピーするだけだから、そんなに時間は掛からないだろうけど。
ため息をついてコピーをする。
一旦家に帰って、着替えようかと思っていたけど、仕方ない。
このままコピーしてから、直接居酒屋に向かえばいいかな。
誰も居ないし……。
「……森下さん?ひょっとして残業か?」
コピーし終えた書類を纏めて、背後から真木部長に声を掛けられて、びっくりしてしまう。
「あっ、はい、コレを見つけちゃって……」
振り返って苦笑いしてしまう。
あたしの背後に立つ真木部長。
身長差があり過ぎて、びくびくしてしまう。
相変わらずの美形、優しい笑顔。
「……悪い、驚かせてしまったね?コレは西島の仕業だな?あいつ今日は幹事だからと張り切ってたからな?」
「幹事さんなら、大変でしょうし、あたしが気付いて良かったです」
笑いながら作業を進める。
真木部長も書類を纏めて、手伝おうとする手を止めるように、
慌てて手を翳した。
「あのっ、真木部長はそんなこと、しなくていいですっ」
真木部長は上司だから、こんな作業するべきじゃない。
「どうして?俺も気付いたからには手伝おう、一緒にした方が早く旨いモノにありつけるだろう?」
イタズラっぽい優しい笑顔に、胸が温かくなる。
そこまで言われると断る理由もない。
「……はい、そうですね、ありがとうございます」
「それにコレは俺が頼んだモノだし、森下さんがお礼を言うこともないんだよ?」
ふっと笑う笑顔が甘く感じて、ドキドキしてしまう。
真木部長は優しい、いつもあたしを甘やかせてるような気がする。
頭に手を乗せられて、撫でられた。
真木部長に良くされる仕草に、錯覚しそうになる。
やっぱりお父さん目線?
「あ…の、子供じゃないので……」
涼くんにも良くされる仕草。