子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第4章 熱くなる体
麻生涼side
最近仕事が忙しくて、食堂でゆっくりランチをする暇もない。
外回りから帰って、休憩室でゆっくりコーヒーでも飲もうとして、
いきなり愛莉の姿を見て、思い切り動揺してしまった。
ほとんど裸の姿を目の当たりにして、一瞬身動きが取れずに、
見惚れてしまった。
……最後にしたのはいつだったか?
もう、認めるしかない。
ずっと一緒にいたから、近過ぎて気付かなかった。
俺は……愛莉のこと……?
休憩室から出て、コーヒーを飲み干して、無造作にゴミ箱に捨てた。
思ったよりも大きな音がして、自動販売機の傍にいる奴に睨まれた。
誰かと思ったら、川合 伊代(かわいいよ)、営業部で野上といい勝負のエース。
仕事はバリバリの固い美人、いつも隙のないスーツ、
糞がつく真面目なお局様タイプ、年は28歳だったか…婚約者がいるらしく、
結婚しても退職しないらしい。
「悪い……」
睨まれた気がしたから、一応謝ると、鋭い視線で睨まれた。
「何かありましたか部長?やっぱり先程のプランは見直した方がよろしいでしょうか?」
まだ休憩時間なのに、熱心だけど、仕事の話をする気分じゃない。
「ああ、さっきの…悪くはないよ?」
「悪くはない?それは良くもないって事でしょうか?」
仕事熱心な川合らしい。
正直いうと悪くないけど、もうひと越えというところか?
「良いのはいい、ただ、もう少し煮詰めると、もっといい内容にはなるかな?」
川合のせいで、スムーズに終わる業務も、妥協しないから長引く事もある。
面倒だと思うこともあるけど、真面目だから、真摯に対応している。
「じゃあ、そうします、外回りに行ってからなので、残業になっても構いませんか?」
「君はそれでいいのか?」
「勿論です、正直、自分の中でも引っ掛かってたので、とことんやります」
「そうか、川合らしいな、結婚後も仕事は続けるって本当?」
「当たり前です、それでダメならしょうがないと思ってますから……!」
缶コーヒーを力込めて握る川合を、微笑ましく思って笑う。
「それなら良かった」
ということは、また、川合に合わせて、俺も今日は残業か。
それもいいかもしれない。
愛莉のアパートに行けば、自分が何をするか、もう、自信もないから―――。
その方がいい。