子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第5章 俺の天使
涼くんをまずは運ばなきゃと思って、何とか抱えようとして、
その体に触れて、体温が熱いことに気付いた。
重たいし、あたしの身長的に無理があるから、床の上で、
何とか引き摺る。
苦しそうな表情、びくともしない体。
少し痩せたように見えた。
「……無理しなくていいし、…ハハ、でっかい目……落ちそう…」
あたしの目に手を伸ばして、涙を拭ってくれた。
「どうして、こんなになるまで…っ!」
涼くんに腹が立ってしょうがない。
その体を少し乱暴に引き摺る。
ズルズルと少しずつ進む体。
「……寝とけば、治るって…、ほっといていいし…」
ズルズル、少し引き摺ると、リビングのテーブルにある、
夕食が見えたのか、涼くんがぼんやり見つめた。
「ああ…ハラ…減ったな…?」
「涼くんのなんだから、しっかり食べてよ?」
「ああ……食べるから…泣くなよ?」
食卓のテーブルの近くで、目を閉じる涼くん、
体温計で熱を図ると38,3分あった。
冷えピタシートを額に張り、掛け布団を持って来て、涼くんに掛ける。
苦しそうな表情、いつも弱音は吐かないで、一人で寝て治す。
おばさんは、休めないから仕事に行き、
あたしが家に行くと、いつも嫌がっていた。
うつるとか、理由はあるんだろうけど、人に弱みを見せたくないんだ。
幼馴染みで本当のお兄ちゃんみたいでも、
あたしには甘えられない。
それが、悔しかった。
涼くんの特別にはなれなかった。
いくらあたしが努力して、その差を埋めようとしても、
涼くんには届かない。
つらい時につらいと言って貰えず、逆に無理をしてしまうのなら、
一緒にいる意味はない。
あたしの前では、お兄ちゃんでい続ける涼くん。
妹じゃなく、支えたいと思っても、
その背中はいつも遠かった。
…………きっと今だけ、彼女もいないから、それだけの理由で、
深い意味なんてないんだ。
額の汗を拭くために、タオルを用意する。
ソファーのリクライニングを倒して、ベッドにして布団を敷いて、
涼くんの体をその上に転がすと、自分の力で少し動いて、
ベッドの上に上がってくれた。
息が上がって、苦しそうに呼吸をしてる。
体を転がすようにして、何とかスーツを脱いで、ネクタイを外す。
体の汗を手早く拭いて、タオルで拭いた。