
触って、七瀬。ー青い冬ー
第19章 夢色の雨
信じたくないのに
この夢がとても心地よくて
都合のいい甘い言葉ばかりで
そんな甘さ、嫌いなのに
やっぱり甘い、自分に甘い。
《もう離れないから》
毎晩思い出していた
大きい手と長い指
その指がどれだけ美しいかなんて
高梨はきっと知らないんだろうな
その美しさが当たり前なんだろうな
羨ましくもなんともないよ
知らなくて当たり前な君だから
きっと美しいんだよ
「は、あっ」
こんなつまらない僕にも
君を振り向かせる何かがあったのかな
それは何だったのか教えてほしいな
今の僕にはそれはもうないのかな
なかったとしたら僕はどうしたらいい?
教えてよ
教えろよ
「はな、離れ…な、で」
過呼吸になりそうで
それでも息を吸おうと思った
君を引き止めようと
光を繋ぎとめようと思った
思ってしまうんだ
だって目の前にきみがいるなら
《うん、離れない》
なんでこんなに甘やかすんだろう
これが夢だからか
高梨は先生みたいに優しく笑った
なんでも受け入れてくれる海みたいな心で
そっと包んでくれる
《ほら、肩掴んで》
高梨の広い肩
もうどれだけ触れてなかったか
高梨は僕のパンツの中へ躊躇いなく手を忍ばせる
《もうぐちょぐちょじゃん
本当に気が早いね?もう待ちきれないんだ》
大きい手のひらが
たまらなく恋しい
「っうう…う、っく、あ」
《自分で擦ってごらん》
「…っや」
《嫌じゃ、ないよな?》
悪戯に微笑むのはいつも通り
だけどこんなにその笑みが恋しいのは今まで以上
そんな顔で見ないで
また依存しそうだ
「っん、ん、うあ」
びり、びり
ぬるぬるに濡れた気持ちいいところが
脳に快楽物質を過剰に伝達していく
腰が円を描くように動く
《やらしい子だなー?
そんなに腰振るほど気持ちいいの?》
あ、やばい
高梨の目
「ん、んんっ…」
単調、単調、単調
繰り返しの動き
メトロノームの音みたいな泣き声
つまんないだろこんな行為
「いや、だ、いっ…」
気持ちがいいからって溢れてくる感情
もうどうにでもなれってはずれてく抑制
《嫌ならやめたら?ねえ》
嘲笑ってくる快感
ぞくぞくが駆け抜ける
《イく時ちゃんと言えよ、いい子なら》
「やだ、やっ…ああ」
嫌い嫌い嫌い
本当に大嫌い
