
触って、七瀬。ー青い冬ー
第20章 歪形の愛執
「って、七瀬もいんじゃん」
七瀬夕紀は、その隣の席で机に顔を伏せていた
眠っているようだ
佐藤に関しては他の男子と紛れて誰も気づいていない。
可哀想なモブ。
「この子ねーすぐ具合悪くなっちゃうから」
「お前は母親かっ」
「いやどっちかっつーと飼い主?」
「…」
七瀬が怒りを押し殺した息を吐いた
そんなに怒んなくてもいいのに
「は、マジ?飼い主とかウケるわ
今の聞かれてたらぶん殴られんぞ」
「かもな」
ほお、なるほど
世間的にも最近の俺達の不仲かは有名らしい
何しろこの程度のモブが知っているというのだ
周りは自由に騒ぎながら着替えを始める
俺も、上だけTシャツになっていたのを脱ぐ
「てか七瀬起こさなくていいの?
まだジャージじゃん」
「あー、いんじゃね?別に」
「ふーん、まあ俺も知らんけど」
…この状況で着替えられるわけがない
七瀬はまだ尻に入ったままでローションも拭かずに
ただパンツと短パンを上げただけだ
多分立ち上がったら漏らしたみたいに見える
「つか次政経かーだっる」
「は?寝るわ」
「先生かわいそー」
実際のところ俺はとても楽しみだった
隣で狸寝入りしているこいつが
どんな風に壊れるか
…1時間、存分に楽しもう
「…そろそろ起きてもいいんじゃないかな?
お漏らしくん」
耳打ちすると地響きのような声が返す
「死ね殺す黙れ」
「はいはい、ご主人のお好きなように」
そんな口を聞いていられるのも今のうち
「あと一応言っとくと俺の手にはリモコンがある」
「…!?正気かよ…」
そう、これがあれば君は俺の思い通り
「悪いけど大真面目」
そのまま、七瀬は席を立ち上がれなかった
…そして授業開始ー
やる気の薄い先生がやってくる
「はいじゃあ今日からはー何ページ?
ああ、そっからね?んじゃ黒板に答え書いてー」
割り当てられた生徒が立ち上がって黒板に問題集の解答を書いていく
「七瀬君?君もじゃない?」
座ったままの七瀬を茶化す
「…こんな状態で無理に決まってんだろ…」
ちなみに言うと、手首を巻いていたガムテープを剥がしきれなくて鋏で無理くり切ったので、
手首も割と不審な状態にある
「じゃあ俺が代わりに書きにいってあげよう」
「…!」
七瀬が嫌な予感を感じ取った
