
触って、七瀬。ー青い冬ー
第21章 湖上の雫
「…それで?待てよ、つまり今高梨の野郎が荒れまくってるって?」
女漁りや破産に追い込む程の客への貢がせ癖、
体の売り遊び、不純な八霧先生との関係、様々な女関係の騒動。高梨に関する騒動で知っている限りのことは全て話してやった。
「そうだよ。もう昔の高梨じゃない。昔の高梨が嘘だったのかもしれないけど…香田が敵視するほどの相手じゃないほど成り下がってる」
それを残念とも思わない。ただ僕の見る目が誤っていた。それだけだ
「そうなのか…?俺には変わんないように見えるけど」
香田は今や小綺麗に身なりを整え、以前の汗臭いバスケ選手らしさはもはや消えていた
「まあ香田の前では素の自分を晒しても構わないと思ってたんじゃないの?」
「どういう意味だよ。…ともかく、高梨がステージだけじゃなくホストとして働くようになって、確かにウチの売り上げは段違いに良くなった。それは高梨の手柄で、でも七瀬が言ってるような悪質な稼ぎ方じゃない。あいつなら貢がせるだけ貢がせようとすればいくらでもやれる、でも」
香田はグラスに手を伸ばした
「そんな風に人から金を巻き上げようとする程、七瀬が信じたあいつは腐ってたのかよ」
カラン、と氷がグラスを鳴らした
「まもなく伊織入ります」
1人、スタッフが連絡を入れた
香田は頷いてグラスを置いた
「それで?計画はうまくいきそうなのか」
そう聞かれて突然不安になってきた
「俺のヘルプは必要なのかって聞いてんだよ」
香田はいつにも増して頼もしい。
いつからそんなにたくましくなった?
かつて僕をいじめた奴とは思えないほど、今はすごく頼りたい
「…で、できればお願いしたいです」
計画なんてあってないようなものだ
「仕方ねーな」
香田はグラスのシャンパン色のジュースを飲み干した
「じゃあ標的が来る前にこれだけは守れよ。
…営業中でも未成年は飲酒禁止」
「そんなの、誰でも知ってるよ」
「知ってても破る奴はいるからな、俺みたいに」
そう言って、香田は席を立ちもう一つ、向かい側にあるソファーに移った
「それと一応、奴なら気付きかねない」
と言って、僕にマスクを一枚渡した
気付くわけがないと自負していたが
万一のためにそのマスクをつけた
するとすぐ、待っていた標的は現れたのだった
「こんばんは、ご指名ありがとうございます」
