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触って、七瀬。ー青い冬ー

第23章 舞姫の玉章



「お前…!」

「サハル、わかるんだろ?教えろよっ…」

「は…なせっ、おい」

サハルは顔をしかめて怯えるような顔をしたが、私がサハルを見ているのを知って態度を変えた。

私が津々と見入っているのを、サハルはじっと捉えた。見ろ、とその目が訴えてくる。

「…そこじゃない、もっと上だ…、う、」


サハルは、熊のものを受け入れて苦しそうに私を見ていた

挙句、熊はサハルを唾液まみれにし
サハルの体力を奪い、泣くまで首を絞め
熊がサハルを殺すと思った。
けれどサハルは私を見つめたまま何か訴えていた。

その目を思い出すと私は、何か焦燥感に駆られ今すぐサハルに触れたくなるのだが、もう既にサハルは私の手の届くうちにはいないのであった。

最後に見たのは、凍える銀の雪原の中で
私の手を掴み損ねた時の寂しい目だった。


……








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