
触って、七瀬。ー青い冬ー
第23章 舞姫の玉章
「子孫のための儀式」とした子作りが義務となる
そこで私は、その課題を果たすべく
連れてこられた女を孕ませようとした
女はどこからかやってきた身元不明のもので
後からそれは「留学生」よばれる身分のものだったらしい
その女は東洋人で、まさに父の望む黒の血を持つものだった
私は暴れる女を押さえつけ股を開かせた
女は日本語を話し、サハルと同じ発話で
私にはっきりと言った
「アクマ」
と
その言葉は知っていた
サハルは私に少しだが言葉を教えてくれていたから
だから私はそれをやめるしかなかった
もし私がアクマなら、私の子はアクマだからだ
しかし、父はそれを課題の不履行として
私を罰した
それが審判の日に行われた
父は私を打った
頬、腹、腕や足
体の至る所を
そうして私は「家族」全員の前で恥ずかしい思いをした
父は私に言った
「子供を作れない男は必要ない。
子供を産めない女も必要ない。
本を読む暇があったら仕事をしなさい。
私が許す以外のことをするのは恥だと知りなさい。
もし男として子供を残さないのなら、お前は私の子供ではない、家族でもない。」
このことを話すと驚くものもあると知ったのは
そう遠い日のことでもない
これは正味たった5年ほど前の出来事であるのに
この国、日本では「有り得ない、まるで中世の話」にされているようだ。
しかしこれは21世紀の出来事であり、
決して作り話などではない。
また、私の家、つまり父の家を出て独立する時は
結婚するときである。
18歳までには結婚相手の女を与えられ、
子供を持って父の持つ他の家に移り住む。
その家もまた共同体であり全てが家族であるから、この後も父の教えに従い生きていく。
学校も、父の子供が営むものであるし、
その他の店など公共的なものは全て「家族」の所有である。
家族同士であるから、財産は当分しあい、
仕事も同様に分け合い、
決して誰か一人が規律を破り秩序を乱すようなことはあってはならないし起こりえない。
皆が父を心から慕っていて、逆らおうという気も微塵もありえないからである。
私達はそこで、幸せに暮らしていくことができるし、何一つ生活に困ることはない。
決められたもの、与えられるものだけで生きているのが、当たり前だからだ。
