テキストサイズ

本気になんかならない

第5章 レスポワール

俺はカクテルを作りはじめる。
注文はまだ。だけど、決めていたから。
氷を馴染ませながら、北里が席につこうとしているのを見守る。

その彼女を、カウンターにいた女性が手まねいた。

「紀子!どうしたの?何か、…可愛らしいね」

「それ、ほめてるの?」

「ほめてるよ?でも、前はもっと大人っぽかったから」

向きを変えた北里は、カウンターに座った。

近い…。バレないよな?
とにかく作ることに集中しよう…。

「でもここ、スリットが大胆でしょ?」

「まあね。何?男と待ちあわせ?」

「そう。早く来すぎちゃった」

「ふうん。あの例の年下君?」

「そうよ。かっわいいんだから」

…俺、あの例の年下君なの?
そして、やっぱり可愛い存在なんだ…。

2人の会話が気になりつつ、俺はリキュールのビンを取る。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ