Memory of Night
第2章 部屋
螺旋になった階段を登り終えてすぐ、宵の目の前に、ローマ字で『Akira』と書かれたプレートのかかっている部屋を見つける。
「どうぞ」
招き入れられたその部屋は、ほとんどのものが白とグリーンで統一されていた。男の部屋とは思えないくらいに、きちんと整理されている。
清潔感のある部屋に驚く。
「キレイにしてんなぁ」
つい呟くと、晃は笑った。
「そんなことないよ」
言いながら、後ろ手に部屋の鍵を閉めてしまう。
室内に、ガチャリと鍵の閉まる音が響いた。
「じゃあ、早速始めようか」
晃は勉強机の一番下の引き出しを開け、何やらごそごそと物色し始めた。
中から、ガムテープとロープ、工具用のはさみを取り出す。
「どれからやる?」
「……女装は?」
「させるつもりだったけど、考えてみたら君の体に合うサイズないんだ。だから今回はいいよ。また機会があったらで」
「ふーん」
もらえる金が減るのは少し残念な気もしたが、女装をしなくてすむのはありがたい。
宵が晃を見ると、晃は宵に笑顔をみせた。
「――さあ、始めるよ。まずベッドの上に座って」
右手にロープ、左手にガムテープ。宵に見せつけるようにして尋ねる。
「どっちで縛ってほしい?」
宵は一瞬迷ったように二つを見比べてから、右手を指さした。
「……ロープ」