Memory of Night
第8章 花火
「……なんか、中途半端だよな。『雲一つない満天の星空にぽっかり浮かぶ満月』みたいなシチュエーションの方がこうゆう時は盛り上がるのに」
「そんな都合よくいくか」
「……夢ないね、宵って」
晃が苦笑する。
そしてふいに両腕を頭の後ろで組んで、大きく伸びをした。
「随分走ったし疲れちゃった。この辺で少し休んでいかない?」
「……早く帰って脱ぎたい」
「ちょっとだけ」
晃はそう言って、川の近くに設置されている木のベンチへと向かう。
仕方なく、宵もその後を追おうとすると、ふと右足に痛みが走った。
宵が足を止め、視線を足元へと落とす。
「宵? どうかしたの?」
晃の言葉に驚いて顔をあげる。
だがすぐに首を横に振った。
「どうもしねーよ」
そのまま晃を追いこし、ベンチへと向かう。そうしてそこへ腰を下ろした。
すぐに晃も追いついてきが、晃はなかなか座ろうとしない。
ベンチの前に立ったまましばし宵を見つめていた。
そして、ようやく動いたかと思えば宵の隣ではなく宵の足元にひざまづいたのだ。