Memory of Night
第8章 花火
「……!?」
そのまま足を柔らかく掴まれ、浮かせる程度に持ち上げられた。
「何すんだよ!」
突然の行動に、宵が慌てて足を引っ込めようとする。だが晃は宵の足を離さず言った。
「足……擦れて赤くなってる」
「たいしたことねーよ」
「でも痛いだろ?」
言いながら、晃は宵の履いていた下駄を脱がせた。
「……ごめん。俺がこんな格好させて走らせたせいだな」
傷というほど深くはないけれど、下駄の紐で擦れたらしいそれは、かなり広範囲に広がっている。
うっすら腫れているし、皮も剥けていて痛々しかった。
「なんですぐ言わない?」
「さっき気付いた」
「……ノンキだな」
晃は呆れたような顔で宵を見上げた。
「おまえがおおげさすぎるんだよ。こんなの、放っておけばすぐ治る」
「ばい菌入っちゃうよ。ごめん、絆創膏持ってくれば良かったな」
「そんなもん必要ねーって。足、いい加減離せよ!」
「やだ」
瞬間、はっと息を飲む。
柔らかなモノが突然触れた感触に、宵はビクッと肩を震わせた。
下を覗くと、晃の唇が傷周辺に覆いかぶさっていた。