Memory of Night
第8章 花火
「な……」
「動かないで。この間の消毒のお返ししてやるから」
「し、しなくていい……っ、そんなん!」
晃の言葉の意味がわかり、宵が強引に足を引っ込めようともがく。
だが晃はそれに構わず宵の足に舌を当てた。
ゆっくりと、擦れた部分を辿るように這わせる。
ヒリヒリとした痛みが走り、だけれどそれだけではないうずきがあった。
「よせ……、触るなっ」
暗闇とはいえ、誰が通るかもしれない公園なんかでこんな大胆なことをする晃が宵には信じられない。
半日中歩き周り、走ったりもして汗だってかいている。
それにひざまづかせて足を舐めさせるなんて、構図的に問題ありまくりな気がして、宵は必死で晃の頭を押し退けようとした。
「痛いままがいいの? やっぱり宵ってマゾ?」
「違うっつってんだろ!」
「だったら、おとなしくして」
そんなふうに切り返されると言い返せない。
宵は、晃から視線をそらし、両手をベンチについた。
抵抗を諦めたらしい宵の足に再度唇を押しつけ、食(は)むようにしてもてあそぶ。いたずらに、軽く吸い上げる。