Memory of Night
第8章 花火
晃が宵の足に触れる度に、ぐっとついた宵の手がピクッと反応するのに気付き、晃は尋ねるようにきいた。
「宵……もしかして感じてる?」
瞬間、横からバッと蹴りが飛んできた。
顔面めがけて容赦なく振りかざされる足を寸前のところでかわす。
「……蹴りはちょっとおてんばすぎだよ。まったく足癖悪いな君は」
呆れたように言う晃の声色にはどこかまだ余裕があって、それが宵には釈然としない。
だがこれ以上は抵抗するすべもなく、何を言ったってどうせまたからかわれるだけなのかと思うと、何も言えなかった。
そよそよと吹く風が、若木の葉を揺らす。
日が暮れたおかげで辺りの気温はかなり下がったらしく、ずっと蒸した中にいた体に冷んやりした風が気持ちよかった。
辺りを包む静寂も、祭の喧騒で疲れた耳には心地いい。
晃は少しの間宵の足を消毒し続け、やがて顔を上げた。
「ちょっと水道探してくるから待ってて」
「水道?」
「ハンカチ濡らしてくる」
最後に宵の形のいい爪を親指で撫で、下駄の上にそっと下ろした。
立ち上がり、晃がまた駆け出す。