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Memory of Night

第2章 部屋


 ピチャン……ピチャンと水の滴り落ちる音がする。

 体を包む温かな感覚に、宵はゆっくりと瞳を開けた。


「起きた?」


 すぐ耳もとで声がした。

 驚いてまわりを見渡し、ようやくここがどこなのか理解する。

 そこは、広い浴槽の中だった。薄いピンク色に染まった湯から、微かに甘い、花の香りがする。


(なんで俺、こんなとこ……ッ!)


 しかも今、宵は晃に体を支えられている格好なのだ。

 宵はそこから出ようと立ち上がったが、足に力が入らない。

 フラリと湯の中に沈み込みそうになった宵を、晃が後ろから支える。


「まだ、あんまり動かない方がいいよ」


 耳に唇を近付けて言う晃に、宵が体をビクつかせた。

 触れられている部分が、妙に熱く感じる。


「放せよ……! なんであんたがここにいるんだよ!?」

「なんでって、君の体を洗ってあげてたんだろ?」

「ふざけんな……っ」


 宵は、弾かれたように晃の腕を振り払った。

 体を離して、晃から視線を逸らす。


「もう、終わりだろ……? ベタベタ触んなよ」

「わかった。ごめん」

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