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Memory of Night

第8章 花火


 晃の声はなんとなく自嘲的で、自信なさげに響いた。

 少しの間、宵にはその言葉の意味を理解することができなかった。

 キスの余韻に痺れた頭が冴えてきて、ようやくその意味を理解できた時、一番最初に感じたのは怒りだった。
 宵は腕をほどいて晃を見据えた。


「本気じゃ……ねーくせに。どうせまた……ッ」


 からかわれてるのかと思った。

 いつかの時みたいに退屈をまぎらわすおもちゃ代わりにしたいだけなのかと。

 だが晃に向き直りその表情を見て、宵は動きを止めた。

 自分を真っ直ぐに射抜いてくる寂しげな瞳。そこには、からかいなんて少しも含んではいないように思える。


「あき……」


 晃はフッと息を吐き出し、宵から顔を背けた。

 細められた瞳から、何かを悟ったような、諦めにも似た色が見える。

 だがそれはほんのわずかな間だけで、晃はすぐに穏やかそうな優等生の顔に戻ってしまっていた。

 まるで取り繕ったように笑顔を張り付け、晃は言う。


「祭、無理矢理付き合わせてごめん。今日の分の金もその前の分も、学校で払うから」

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