Memory of Night
第2章 部屋
「まだ帰るなよ」
後ろから声をかけられ、宵が振り返る。
「手首。……痕残しちゃってごめん」
宵がちらっと自分の手首に視線を落とす。
そこには確かに、赤い痕がくっきり残っていた。少しだけ、痛みもある。
「いーよこれくらい」
「手当てしたい」
「必要ねーって」
頑なに拒む宵に、晃は意地の悪い笑みを向ける。
「俺に触られるのが怖い?」
「は?」
「随分な乱れようだったもんな、さっきの君は。見てて興奮した。あんなに興奮したの、久しぶりだよ」
言ってることはどこかのエロ親父みたいなのに、下品に聞こえないのは顔がいいからだろうか。
「……サド」
ボソッと呟いた宵に晃は優等生の顔で笑ったが、否定はしなかった。