Memory of Night
第9章 予感
プリントの、式を書く端の部分に書かれていたのは公式と簡単な説明だった。
どの問題にどの公式を当てはめるのか、これなら一発でわかる。加えてややこしいところには補足説明。
問題を解くよりこっちの方が難しいのではないかと思ったが、確かに明らしい配慮だとも思った。
明は面倒見がいい。だから時折、宿題や提出物などの範囲や提出日を聞いたりしていた。そうすると、必ず丁寧すぎるくらい丁寧に教えてくれる。
「ありがと。スゲーな」
「数学は得意なの。多分それで解けると思う。わからなかったら言って」
「どーも」
ソファーに座り、明の書き残してくれた公式を見ながら問題を解き始める。
それはずいぶんとわかりやすかったけれど。
先ほど聞いた晃達の会話が頭から離れずに、なんとなくイライラした。無造作に降り続ける雨が、その気持ちに余計に拍車をかけている気もするが。
「宵ー、あたし暇」
「知るか」
「クラス戻ってプリント貰ってきてよ」
「やだよ、めんどい」
そう答えて、時計に視線を向ける。
あと十分で五限が終わる。少なくとも数学の自習が終わるまでは教室に戻る気はなかった。