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Memory of Night

第11章 罠


「ちっ。遊んでんじゃねーぞてめーら。相手は1人たぞ? 何てこずってんだァ?」


 苛立たしげに金髪男が声を荒げる。

 その声に反応し、男達が身構える。その瞳から滲む、警戒の色。


「うっせーな。こっちだって暇じゃねーんだよ」


 宵は一度体をかがませた。視界に入れるのは、コンクリートの上の水溜まり。

 病院の方角にいる男達に向かってその水溜まりをおもいきり蹴り上げた。

 宵のその行動は、完璧に不意打ちだったらしい。

 舞い上がる水しぶきに、正面にいた男がとっさに顔をかばう。

 その隙を見逃さず、宵は男の両腕を掴んで自分の方に引き寄せた。

 バランスを崩した男の腹を蹴り上げる。


「くうっ……」


 狙った通りのみぞおちにヒットしたらしい。

 膝をつき、口から唾液をこぼしながら激しく咳き込んでいる男をのんびり視認している余裕はなかった。


「てンめぇ……っ!」


 怒りに震える声と共に、隣にいた男が襲いかかってくる。

 宵は学生鞄で、男の顔を横殴りにした。


「がっ」


 中身は教科書。効果は抜群だったらしい。

 よろけた男は痛みに顔を歪め、後ろに尻をついた。

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