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Memory of Night

第12章 吐露


「――好きなんだ……っ!」


 唇を離した瞬間、晃は叫んだ。

 その声はまるで悲鳴のようだった。乱暴なキスで宵を追いつめたのは晃の方なのに、晃の方が追いつめられた顔をしている。


「……放っとけないんだ、宵のこと」


 そうして悲壮な声で囁いた。その時の表情も声も、晃の方が苦しそうに見える。

 長いキスの後、晃は宵を抱きしめた。

 寝乱れた髪に指を差し入れ、片腕で宵の頭を抱きすくめる。

 そのしぐさだって乱暴なのに、抵抗できなかった。

 それはきっとお互いの怪我のためなどではなく、自分の体にまわされた晃の腕が、服越しにでもわかるくらいに震えていたからだ。


「ごめん……」


 腕と同じく震える声で、晃はつぶやいた。


「もっと早く、助けにいってやれなくて」


 言いながら、宵を抱く腕の力を強める。

 ……泣いてしまいたかった。

 晃の胸にすべて預けて、思う存分。吐き出したいものが山ほどあった。

 晃の背を抱き返したい衝動を、宵は左の拳を握って堪える。

 晃の言葉に素直に甘えられないのは、多分意地とかプライドのせいじゃない。

 ――ただ怖かった。

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