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Memory of Night

第12章 吐露


 知ってる。わかってる、そんなの。

 この七年間で痛いほど実感した。

 晃の手の平が、宵の頬を包み込む。肌を通して伝わってくるのは、ひんやりした体温。

 長い髪に隠れた耳元に唇を近づけ、晃は囁いた。


「ねえ、宵。俺はあの人とは違うよ」


 『あの人』という言葉に、自分の心を見透かされた気がして宵は一瞬身を震わせた。

 それが晃にもわかったらしい。


「宵がそんなふうに感情的になるのは、あの女性が絡む時だけだから」


 静かにそう言い添えた。


「君は自分のせいであの人が入院したって思ってるんだろう? ……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。それは俺にはわからない。わからないけど……」


 晃はそこで一度言葉を切った。

 息を吸う間を少しだけ取って、続ける。


「もう、解放されてもいいんじゃないか?」


 声の調子をわずかに強めてそう問いかけた。


「前に言ったろう? あの人は宵のこと好きだって。宵の存在はきっと支えになってたって。そんなに、自分を追いつめるような考え方はやめよう? それに志穂さんの病気は治ったんだよ。もうすぐ退院して、幸せになれる」

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