
Memory of Night
第13章 吉報
「大西くんは腕の骨折といくつかのかすり傷程度だったから入院はしなかったんだが、すぐに帰ろうとしなくてね。宵くんが目覚めるまでずっとついててくれたんだよ。本当にいい友達を持ったな、君は」
穏やかに笑って弘行はそんなふうに言う。
晃には感謝しているけれど、『友達』というのはどうだろう。
――好きなんだ……ッ――
そう叫んだ晃の顔が、脳裏に浮かぶ。
いつもの気取った笑みとは違う。あんなふうに、高まる感情をそのままぶつけてくる晃の姿は、初めて見た。
だからかもしれない。その声や表情は宵の脳裏に焼きついて、永遠に消えない気がした。
宵は左手で、そっと自分の唇に触れた。
無理矢理唇を奪われた。あんな余裕のない晃を見るのも、同じく初めて。
唇に触れていた手を持ち上げて、陽の光にかざしてみる。
前に目覚めた時と同じ。窓際では、白いカーテンが揺れている。
晃との関係は友達じゃない。
――じゃあ、何?
「宵くん」
呼ばれて、手を下ろして振り返る。
「あと、志穂さんの件だけど」
「晃に聞いた。手術成功したんだよね?」
