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Memory of Night

第14章 聖夜


 肌を晒すには、夜の風は少し冷た過ぎたかもしれない。

 今さらかな、と思いつつも、晃は宵のお望み通りに窓を閉めることにした。

 夜の澄んだ匂いや虫の声は遮断され、部屋は静寂に包まれる。

 静かな空間に満ちるのは、荒い息づかいだけだ。


「……大丈夫?」


 ベッドの上にぐったりと体を投げ出したままの宵の様子に、ちょっと焦らしすぎたかな、と思い晃はそう声をかけた。


「まだ前戯だろ?」


 畳みかけるようにそう付け加えると、灰色の瞳に睨まれた。

 罵声の一つや二つ飛んでくるかと思ったのに、宵にはそんな余裕はないらしい。

 いくつもしわが刻まれたシーツの上で、白い胸元が何度も上下する。

 服なんて、とうに剥ぎ取られてしまっていた。

 ほとんど陽に焼けていないらしい白い肌が、うっすら朱色に染まっている。

 荒く呼吸を整えながら、宵がようやく口を開く。


「おまえ……もっとフツーにできねーのかよ」

「普通だろ?」

「……変態」


 間髪入れずにしれっと返され、宵はふいっとそっぽを向いた。

 最初は甘い、優しい雰囲気から始まったのに。

 後半はそれどころじゃなかった。

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