テキストサイズ

Memory of Night

第16章 終章


 晃から逃げるように身を引き、雪の塊を指さす。

 そういえば雪だるま作りを中断したままだったことを思い出し、晃は二つめの塊に手を伸ばした。

 まだ小さいサイズのそれに雪を集め、ギュッ、ギュッと固め始める。


「じゃあ宵。枯れ葉とか枝とか石拾ってきて」

「え?」

「えじゃなくて。顔や手がないと変じゃん」


 雪の塊を二段に重ねながら晃が言う。

 確かにこれだけでは雪だるまに見えない。

 というよりそこまで本格的に作るつもりだったのかと思う。

 てっきり、手悪さ程度にいじっていただけかと思っていたのに。

 そういえば晃は意外と凝り性だったのを思い出した。


「……自分で取ってこいよ」

「つべこべ言わずに。冷たい雪の上に押し倒されたくなかったら早く」


 なんだか当然のように恐ろしい脅し文句を吐きながら、晃は顎をしゃくって宵を促した。

 しぶしぶ立ち上がり、雪の上を歩きながら木の下に向かった。

 木枯らしが冷たい。肌が剥き出しの部分がすーすーする。

 雪の降り積もった地面は歩きづらいし、朝っぱらから何をしているんだかと虚しくなったけれど、気にしたら負けな気がする。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ