Memory of Night
第16章 終章
吐く息が白い。雪の中にずぼすぼと埋まりそうになりながら、木の根本を目指した。
辺り一面見渡す限り白、白、白。枯れ葉も枝も石も見当たらない。
どうやら、雪の中に埋もれてしまっているらしい。
宵は軽い舌打ちをして膝を折った。屈みこんで雪に触れると、指の先が痛み出しそうなほど冷たい。
かまわず奥まで手を突っ込んでざらついた雪を掘り起こすことだけに集中する。
面倒事はさっさと終わらせてしまいたかった。
かじかむ手の触感だけを頼りに、雪だるまの飾り付けに使えそうな物を手当たり次第に集める。
冬だからかろくな物はなかったけれど、それでもいくつか拾って石段に戻ろうとした時だった。
「宵」
ふいに名前を呼ばれた。
凍結した空気の中に、晃の低音はよく響く。
宵は足をわずかに速めながら応える。
「……今度はなんだよ? 言われたもんなら今……」
「――もっと俺に執着しろよ」
「え?」
宵はわずかに、瞳を見開いた。
声色は優しいけれど、晃の声は酷く真剣味を帯びて聞こえる。
宵は雪だるまの横で立ち止まり、黙って晃の顔を眺めた。